虎門は子どもたちに「取り方教えてー」と囲まれて困ったように笑っている。
妹がいることもあって、年下の子の面倒を見ることが苦でないように見える。
虎門は法被を着た三歳くらいの男の子ひっつかれながら、初田を見て目を瞬かせた。
「あ、あなたは。この間、横須賀線に乗ってましたよね。根津美さんのお兄さんだったんですか?」
ナナにレンさんと呼ばれたときと同じような錯覚に陥り、初田の背中に嫌な汗が流れた。
初田は虎門に顔を見せたことがないし、ナナの時と違って口を開いていない。
声を聴いていない状態で初田を誰かと間違えるのなら、その相手は平也以外にありえなかった。
「人違いですよ、虎門さん。わたしは初田。あなたが見たのは別の人間です」
ようやく、一言だけ喉からでてきた。
「え、は、初田先生!? でも、全く別人で声も同じなんてそんなこと……」
「生き別れの兄弟がいるんです」
ナナが年末以来、歌舞伎町では見なくなったと言っていた。
潜伏先を横須賀線沿いのどこかに変更したと考えるのが妥当か。
虎門はおそらくただ同じ路線に乗っていただけ。
「ちなみに、その人とは何駅で会ったんです?」
「ええと、クリニックからの帰りにそこの駅から東京方面行きに乗って、……ううん、何駅で見かけたかまでは覚えていないです。二、三駅くらい電車が停車したあとだった気がするんだけど、すみません」
「いえ、こちらこそすみません。たまたますれ違った人とどこで会ったかなんて、覚えていろというほうが無理というものです」
妹がいることもあって、年下の子の面倒を見ることが苦でないように見える。
虎門は法被を着た三歳くらいの男の子ひっつかれながら、初田を見て目を瞬かせた。
「あ、あなたは。この間、横須賀線に乗ってましたよね。根津美さんのお兄さんだったんですか?」
ナナにレンさんと呼ばれたときと同じような錯覚に陥り、初田の背中に嫌な汗が流れた。
初田は虎門に顔を見せたことがないし、ナナの時と違って口を開いていない。
声を聴いていない状態で初田を誰かと間違えるのなら、その相手は平也以外にありえなかった。
「人違いですよ、虎門さん。わたしは初田。あなたが見たのは別の人間です」
ようやく、一言だけ喉からでてきた。
「え、は、初田先生!? でも、全く別人で声も同じなんてそんなこと……」
「生き別れの兄弟がいるんです」
ナナが年末以来、歌舞伎町では見なくなったと言っていた。
潜伏先を横須賀線沿いのどこかに変更したと考えるのが妥当か。
虎門はおそらくただ同じ路線に乗っていただけ。
「ちなみに、その人とは何駅で会ったんです?」
「ええと、クリニックからの帰りにそこの駅から東京方面行きに乗って、……ううん、何駅で見かけたかまでは覚えていないです。二、三駅くらい電車が停車したあとだった気がするんだけど、すみません」
「いえ、こちらこそすみません。たまたますれ違った人とどこで会ったかなんて、覚えていろというほうが無理というものです」



