初田ハートクリニックの法度

 ギャラリーのちびっ子たちからも拍手がわきおこる。

 小さなビニールに水と金魚をいれてもらったものを、虎門はそのままネルに渡す。

「根津美さん。これでよかったですか」

「は、はい! ありがとうございます虎門さん! なんとお礼を言ったらいいのか」

「い、いや、レストランで助けてもらったお礼、何もできていなかったから。これでお礼になるかわかりませんが」

「じゅうぶんです! むしろ私がお礼をしないと。何かほしいものがあったら言ってください」

 ヒーローを見るかのように目を輝かせて、何度も虎門にお礼を言うネル。

 ネルに気があるのか、虎門は耳まで紅潮している。

 ネルが喜んでいるのだからそれでいいはずなのに、初田はなんだか無性に腹が立った。

 ネルの人当たりがいいのと、患者と仲がいいのはいつものことなのに。

「にいさん、金魚。取ってもらったよ。あとで水槽やご飯買おう」

 喜々として初田に金魚を見せにくるネル。