初田ハートクリニックの法度

「にいさんにいさん、金魚がとれたらクリニックで飼っていい?」

「わたしがいるのに小魚を飼うなんてチャレンジャーですね、ネルさん。わたし七歳の時、メダカの水槽にザリガニを入れたことがあるんですよ」

 初田は小学生の頃、祖父母宅近くの小川で小魚を捕った。

 ついでに田んぼの溝でザリガニを捕まえ、同じ水槽で飼った。

 翌朝には小魚がいなくなっていた。

「ザリガニは魚を食うから同じ水槽に入れるな」と、祖父にげんこつされて、初めて駄目なことだと知った。

「金魚になにかしたら、初斗にいさんのご飯がメザシ一本だけになります」

「しません」

 蜻一じいさんが水タバコを吸いながら、ネルに呼びかける。

「ネルちゃんやってみるかね。一回百円だよ」

「やる!」

 町内の小さい子どもたちに混じって挑戦したネルだったが、五回チャレンジして釣果ゼロ。

 持っていたポイは真ん中が大きく破け、使い物にならなくなった。