初田ハートクリニックの法度

 祭が始まってしばらくすると、かき氷で舌を真っ赤にしたコウキが初田のところに来た。

「初田先生、俺も風船もらっていい?」

「どうぞ、コウキくん」

「ありがと、一度でいいから風船をもらってみたかったんだ」

 コウキはうさぎみみの形をした風船を振ってご機嫌だ。

 両腕にたこやき、やきそば、フランクフルトなどをさげて、これでもかというくらいに祭を満喫している。

「お母さんは一緒じゃないのかな」

「母さんは今日、パートがあるから。だからこの食べ物も、帰ってから母さんと一緒に食べる」

「そうでしたか。順調そうでなによりです」

 コウキがある程度社会に適合してきたため、礼美は六月に入ってから短時間のパートを始めた。

 離婚の際に養育費をもらったとはいえ、お金は無限ではない。

 コウキも炊事洗濯を覚えて、礼美の助けになろうと頑張っている。

 昨年通院を始めたときと比較すると、珠妃母子は見違えるほど良い方向に変化していた。