初田ハートクリニックの法度

 兄を取られる妹の気持ちだろうか、それとも。

 胸がざわつき、初田は急いでスマホを取り出してネルに見せる。ナナに送ってもらった平也の写真だ。

 ネルは目を丸くする。

「平也さん? この写真どうしたの?」

「おや、わたしだとは思わなかったですか」

「だってこの前一度会ったし、初斗にいさんは絶対にコーヒーを飲まないでしょ」

 他の誰かに見せたなら、いつ東京に行ったんだと聞かれたかもしれない。

「ナナさんが持っていた写真です。わたしの声を聴いたナナさんに、レンさんはここのお医者さんだったの? と聞かれまして。歌舞伎町の、ナナさんが働いていた店付近にあるバーによく出入りしていたそうです。レンという偽名でね」

「……だから、そこに行って調べようと思ったの?」

「ええ。ナナさんがバーの店主と顔見知りだというので、口利きしてもらう約束をしたんです。知り合いをつたっていけば、平也の隠れ家にたどり着けるかもしれない。わたしが同じ服装と言葉遣いをしていれば“レンさん”だと誤認される。口を滑らせて情報を吐いてくれると最良です」

 平也と鏡映しの容姿を、使わない手はない。