初田ハートクリニックの法度

「飲みませんよ。そこの店主に用があるので話を聞くだけです。ナナさんがお知り合いだというので、口利きしてもらうんです」

「ほんとうに?」

「嘘はついていません」

 正直に説明したのに、ネルの目はまだ疑っているように見える。

 仕事が終わってから詳しく話さないとへそを曲げてしまいそうだ。

 冷房が効いているのに冷や汗がとまらなかった。

 ネルが退室してから、ナナが気まずそうに視線をそらす。

「な、なんか彼女さんに勘違いさせちゃったみたいで、ごめんなさい。うちも帰るときちゃんと説明するから……」

「彼女じゃありませんよ?」

「じゃあ、新婚さん?」

「いえ、彼女でも奥さんでもないです。はとこ(・・・)です」

 ナナは理解できないという顔をした。