初田ハートクリニックの法度

「明日は仕事があるので、そうですね、月曜の夜なんてどうでしょうか。ナナさんの都合がよければ」

「うん、空いてる」

「店長に事前連絡はしないでください。予約はわたしが自分でするので。わたしのわがままに付き合ってもらうのだから、一杯くらい奢りますよ」

「じゃあ、ありがたく奢られようかな。うち、クローバー・クラブが好き」

 会話を聞いて、ネルは一瞬動きを止めた。

 テーブルに乗せようとしていたアイスティーがかしぎ、初田がキャッチして事なきを得る。

「どうしました、根津美さん。眠くなったなら休んでいいですよ」

「だいじょぶ」

 お盆が空になると、ネルがお盆の平面でウサギ頭を叩いた。

 力が無いから痛くはないけれど、これまでネルがこんな行動に出たことが無いので初田は瞬きする。

 ナナもネルの謎の行動に固まっている。

「ど、どうしたんです?」

 初田が聞くと、ネルは頬を膨らませて声を荒らげた。

「初斗にいさん、約束破るつもり?」 

「は?」

「お酒飲んじゃ駄目って言ったでしょ」

 今の会話だけ聞くと、あたかもバーで一緒に飲む約束をしているように取れることに気づく。

 ネルにだけは勘違いされたくなくて、初田は必死に弁明する。