初田ハートクリニックの法度

 訪問診療予約の当日。

 初田は電車で中村家に向かった。

 チャイムを鳴らすと礼美がすぐに出迎えてくれた。

「いらっしゃいませ、お待ちしてま……」

 扉を開けた姿勢のまま、礼美が言葉をつまらせた。

「青い帽子が嫌いなようだったから黄色い帽子にしたんだけど、お気に召さなかったかな?」

「あ、いえ。そのかぶりもののままクリニックからいらしたんですか?」 

「わあ! うさたんがいるー。うさたーん! と小さな子に囲まれてね。やっぱりみんなウサギが大好きだ」

 一瞬呆気にとられたものの、礼美はすぐに気を取り直して、初田をリビングに通した。