初田ハートクリニックの法度

「次の就職活動をするにあたって、自分の得意不得意を見える化しておくと、特性に合った仕事を探しやすいですよ」

「見える化」

 初田はノートを出し、真ん中に縦線を引く。

 左に得意、右に苦手と項目欄をつくり、虎門に見せる。

「例えばわたしの場合、こうして対面で話すのは得意。不特定多数と話すのは苦手です。持久力がないです。在庫整理は得意です。同じ作業を延々とするのが得意です。毎回違うことをするのが苦手です。……というふうに書き出してみると、スーパーのレジのような仕事とは絶望的に相性が悪い、と分かります」

「先生でも、できない仕事ってあるんですね」

「そりゃそうですよ。言ったでしょう、アスペルガーも得意不得意が大きいだけだって。虎門さんもこうして書き出すと、自分に向いているものが見えてきますよ」

 初田の場合、たまたま自分の希望する仕事が自分の特性に合っていただけ。

 虎門も、これまで巡り会わなかっただけで自分にぴったりの仕事があるはずなのだ。

 虎門の問診の後、ナナと話をする。

 最初はウサギマスクに驚いたものの、入ってきて患者用のソファに腰を落ち着けた。

 すでに兄の障碍について受け入れているようで、取り乱す様子はない。