初田ハートクリニックの法度

「虎門、1番テーブルの料理できたぞ」

「はい!」

「4番テーブル空いたぞ。早く下げてお客様を案内しろ! 入り口の待機列が長くなってんぞ」

「は、はい!」

 客が入れ替わり立ち替わり、常に店内の状況がめまぐるしく動く。

(4番テーブル片付けなきゃ、いや、お客様の案内、ええと、配膳を先に?)

 臨機応変というのが最も苦手とするところではないかと指摘されたがその通り。

 今もまた頭が回らなくなっている。

「おにーさん、オレンジジュースちょうだい」

 目の前のテーブル席の男の子が呼び出しベルを連打して虎門に言う。

「すみません、伝票取ってくるのでおまちください」

 レジにある伝票を取ろうとしたところで店長の怒号が飛ぶ。

「1番テーブルの配膳!」

「は、はい!」

 急いでキッチンに行き、1番テーブルの伝票が置かれたトレーを取る。

「おまたせしました」

 1番テーブルの配膳を済ませたら、次になにをするべきだったか考える。

「オレンジジュースまだ?」

 男の子に聞かれて、伝票を書いていないことを思い出す。

「すぐにお持ちします」

 レジに走り伝票を書き、キッチンに届ける。

 席が空くのを待つ客の列はさらに伸びている。

 待機用の椅子で待つ人たちの顔は苛立ちで険しくなっていた。

「虎門! いつになったら片付けるんだ!」

「はい!」