初田ハートクリニックの法度

「ま、待て待て待て!」

 急いで玄関を開けると、腕組みして角を生やさんばかりに怒り狂っているナナが立っていた。

 兄の虎門と正反対でおしゃれに余念がなく、虎門が名前を知らないような大人女子向けアパレルブランドの服で身を固めている。

 ナナは虎門の返事を聞かないうちから、パンプスを脱いで上がり込む。

 投げ出してあったレジ袋をめざとく見つけて、適当な場所に座りながら中身を取り出した。

「これが病院の薬? 初田ハートクリニック・精神科」

「そ、そうだよ。そこが今日行った病院」

「ふうん。それで、なんでうちが兄貴の障害者手帳申請を嫌がるって話になるの?」

 目尻をつり上げ、ナナは問い詰めてくる。

 昔から気が強い子で、兄として気圧されてばかりだ。

 兄妹喧嘩で勝てた試しがない。

 ナナの言うことはきついが、いつも正論。

 すごく耳が痛い。