初田ハートクリニックの法度

 虎門はアパートに帰ると、汗臭くなったTシャツを脱いで、蓋を開けっぱなしの洗濯機に放り込んだ。

 六畳の1K、家賃四万円という安アパートは、西日が差し込むせいで夜もかなり暑い。

 落ちているエアコンのリモコンボタンを足の親指で押して窓際まで歩く。

 部屋干ししていたTシャツが乾いていたから、ハンガーからとってそのまま着た。

 処方された薬が入っているレジ袋を足元に投げてベッドに倒れ込む。

 枕元にある求人情報フリーペーパーを開いて見るけれど、情報が頭に入ってこない。

「障碍者枠、なんてここに載ってないんだよなぁ」

 週刊求人情報は、様々な職種の募集が載っている。

 けれど特別に記載がない限り、健常者のための求人、という大前提がある。

 障碍者枠で働くにしても、馬鹿にされたりハブられたりしやしないか。

 昨日までこんな心配しなくてもよかったのに。

 何年通院しなければならないんだろう。

 薬も処方されているから、薬の費用もかかる。

 なかなか定職に就けない身には、この定期通院費だけでかなりの負担だ。

 きちんと治療すれば健常者になれるのか。 

 いや、なれない。

 生まれ持ったものであり、特性と向き合って生きるしかないと初田に言われている。

 わかっていても、受け入れたくない。