初田ハートクリニックの法度

「露店のレジはタブレット端末にするわ。アリスちゃんとネルちゃんでシフト交代をお願いしたいの。タブレットの使い方は会議の後説明するから」

「任せてください歩さん。ネルは日中昼寝しないとなんだから、前半はあたしが店番する。ネルは十五時から交代で店じまいまででいい?」

「ありがとうアリスさん。そうしてもらえると助かるよー」

 アリスはネルがナルコレプシーであることを知っているので、ネルに負担のないシフトを提案してくれた。

 商品にはそれぞれに値札がついているから、値段を覚えなくても大丈夫だということや、アクセサリーを包むときの取り扱いの説明がされる。

「ところで初田先生。まさか祭のときもウサギをかぶったままなの? 顔出しNGなんだよね」

「そんなことをしたら、暑さで蒸しウサギになっちゃいますねぇ」

 初田は他人事のように笑う。

 普段はエアコンが効いた部屋にいるから平気なだけで、かぶり物をしたまま一日中炎天下にいたら熱中症まっしぐらだ。

「初斗にはマスカレードの仮面をかぶってもらうから大丈夫よ。店の服と合わせていれば宣伝にもなるから、販売の手伝いがないときはその格好でビラ付き風船を配ってね」

「任されました」

 初田は歩から渡された目元を覆う仮面をつけ、ウサギマスクに乗せていたシルクハットをかぶってみせる。

 薔薇飾りがついた仮面舞踏会(マスカレード)の小道具だ。

 当日はこれにドレスシャツと舞踏会ズボンを組み合わせる。

「わー、さすが先生。怪しい格好がよく似合うね」

「褒められました」

「あんた本当にポジティブよね」

 初田にとって、大抵の言葉は褒め言葉だ。