初田ハートクリニックの法度

 強化ガラス製のカップだからローズヒップの赤が映える。

 初田は甘酸っぱい香りを堪能してから口をつける。

 たわいもない話に花を咲かせている間に、歩が仕事を終わらせて戻ってきた。

「お待たせ。それじゃ会議を始めましょうか」

 ホワイトボードを取り出して、マーカーでキュッと議題を書き上げる。

【商店街七夕祭 仕事分担】

 毎年七夕に一番近い日曜日に、この商店街で七夕祭が開催される。

 駅前商店街商工会に所属する店舗が露店を出店することができる。

 初田は病院ゆえ、出店と言われても出すものがない。

 だからいつもネルと二人で、歩の手伝いをしていた。

「今年はアリスちゃんがいるからね。店舗と露店の同時営業をしようと思うの」

「じゃあわたしは露店設営と、手伝いが必要なときに呼ばれた方に行けばいいかな」

「それでお願い」

 歩の露店は出張版ワンダーウォーカーだ。

 祭に来るお客さんが露店で買い回りをすることを考慮して、手のひらに収まるサイズまでの小物やアクセサリーを販売する。

 露店営業時間は十時から十九時まで。

 以降は広場で来場客に花火を配り、二十時まで花火大会というのが恒例の流れだ。