初田ハートクリニックの法度

 一日の業務が終了した後、初田とネルはワンダーウォーカーを訪ねた。

 夏間近で、十九時過ぎでもまだ空が明るい。

 CLOSEの札がさがる扉を開けると、レジの閉め作業をしている歩が顔を上げた。

「わざわざ来てもらって悪いわね初斗、ネルちゃん」

「別にかまわないよ。徒歩一分だし」

「おじゃまします、歩さん」

 初田は答えながらウサギマスクを脱ぐ。

 かぶるのに慣れているとはいえ、やはり暑い。

 汗が額を伝ってしたたる。

「もうすぐ終わるから、ダイニングに入っていて。アリスちゃんはもう先に準備しているわ」

「わかった」

 居住部も店と同じく歩の趣味が全面に出ていて、北欧のアンティーク家具で統一されている。 

「いらっしゃい二人とも。初田先生がウサギマスクをしていないなんて珍しい」

「顔を知っている人間しかいないからね」

 初田とネルは椅子を引いて座り、アリスがローズヒップティーを出してくれる。