初田ハートクリニックの法度

「夜食でも作っているのか」

 夜中にお腹が空くことは、十代の若者ならよくあること。

 秀樹はホッとして歩み寄り、血の気が引いた。

 ーーまな板に、首と胴がお別れしたネズミが乗っていた。

 コウキは罠からネズミを出し、左手に肉切り包丁を持って振り下ろす。

 鳴き声が途絶え、まな板に赤い染みが広がる。


 秀樹の喉は声を出そうとして失敗した。ヒュ、と乾いた音を出すのみ。

 頭が一気に冷える感覚。

 普段からやっているのか、振り下ろす刃に迷いがない。

(こいつは何をしている。なんなんだコレは)

 右手を朱く染めるコウキの口元は、笑っていた。