初田ハートクリニックの法度

 近所に魚屋があるためか、家の中をきれいにしていてもネズミが侵入することがある。

 だからネズミ取りをしかけていた。
 ネズミがかかっただけなら、鳴き声がするだけのはず。

 キッチンの流し手元灯だけがぼんやりついていて、人影が見える。

 礼美がこんな時間から料理の仕込みをすることはない。

 秀樹が作りたての温かい料理を好むため、礼美が料理を始めるのは秀樹が起きる一時間前、朝六時からと決まっていた。

 泥棒なら灯りをつけ音をたてるなんて馬鹿なことしない。

 可能性がないものを引き算しながら、秀樹はダイニングキッチンに踏み込んだ。

 パタ、と秀樹の立てたスリッパの音に気づいた人物が振り返る。
 コウキだ。