初田ハートクリニックの法度

 神奈川県の鎌倉駅から徒歩十五分ほどの商店街。
 その一角に、初田(はった)ハートクリニックという心療医院がある。

 変人医師だが腕は確か。
 と噂のあるクリニックに、ひと組の親子が訪れた。

 十代半ばの少年と、その母親。

 少年は黒髪を伸ばしていて、俯きがち。
 服装はブランドのシャツとパンツ、革靴。
 年齢の割に大人びた服装だ。

 母親の方は授業参観にでも行くようなスーツ。
 しきりにクリニック内に視線を走らせている。

 受付の内装は普通の病院と大差ない。
 カウンターと長いソファと観葉植物。
 マガジンラックには絵本や料理雑誌が置かれている。

 受付の女性に案内されて診察室に入ると、二人はギョッとした。
 
「ようこそ、君が精神センターから紹介されてきた中村コウキくんか。私は初田初斗(はったはつと)。このクリニックの医師です」

 診察室に入ってすぐ、向かいのソファにウサギ頭の男が座っていた。