初田ハートクリニックの法度

 六月最初の日曜日。

 ネルはアリスと二人で最寄り駅の中にあるレストランにいた。

 アリスはクリニックの向かいで働いているから、開店準備中のアリスと話をする機会が多い。

 そのうち意気投合して、今日はこうして一緒に買い物に来た。

「ふふふ。予想していたとおり、アリスさんはかっこいい服が似合うね」

「ネル。そういうのやめてよ恥ずかしい……」

 駅ナカの服屋をまわり、アリスは服や下着を、ネルは初田の夏用カッターシャツを買ってきた。

「初田先生の服はネルが買っているんだね」

「そうなの。初斗にいさんはあまり外に出ないから」

 初田は出張診察でもないと外出しない。

 だから買い物は基本ネルの担当だ。

 重くて運ぶのが大変なものは通信販売を利用する。

 アリスが初田の事情を知っているから、ネルも話しやすい。

 レストランは日曜の昼すぎだから、七割以上の席が埋まっている。

 入店してから三分ほどして、男性店員がオーダーを取りに来た。