初田ハートクリニックの法度

 ネルは父を早くに亡くしているし、恋人もいないから、男性とこんな形でスキンシップをとったことがない。

 唐突に、高校の頃同級生から言われたことを思い出す。

『年上の男性と二人暮らしって、意識してドキドキするものじゃないの?』

 ネルは初田を恋愛対象として意識したことがなくて、初田もたぶんネルのことを異性として意識していない。

(これはびっくりしただけで、そういうものじゃない、うん)

 ネルの戸惑いなどまったく気づかず、初田はのんびりした口調でつぶやく。

「ああ、ネルさんは温かいですね。やっぱりネコみたいだ」

「ネコじゃないよ。初斗にいさんの体温が下がっているだけだよ」

「よしよし。ネコちゃん、お魚食べますか?」

「たべませんーー!」