初田ハートクリニックの法度

「初斗にいさん、大丈夫?」

「リナさんなら、一命を取り留めましたよ。憎まれ口を叩く元気はあるようなので、大丈夫でしょう」

「それもあるけど、そうじゃなくて……にいさんが」

 普段からどこかぼんやりした表情をしているけれど、今の初田はぼんやりというより虚ろだ。

 献血もほとんどしたことがないため、血を抜かれることに慣れていない。

 そんな人間が献血の四百ミリリットルを超える血を失ったのだ。

 貧血の症状が顕著だった。

「だいじょうぶ、わたしは体が丈夫なのが取り柄……」

 一歩踏み出してふらつき、ネルによりかかるように倒れ込んだ。

 標準体型とはいえ、初田の身長は一八〇。

 ネルは重さを支えきれずによろけた。

 手を繋いだり手首で脈をとったり、初田に触れられることには慣れている。

 けれど、まるで抱きしめられているような感じで、ネルの心音が早くなった。