初田ハートクリニックの法度

 コウキはぽんと手を叩いて歩を指す。

「なら、店長に贈ればいいんじゃない」

「え。なんでアタシ?」

「店長って、お母さんみたいでしょう。世話焼きで、優しい」

 価値観がだいぶ人とずれた子だという認識はあったけれど、お母さんと言われたのはこれが初めてだ。

 たぶん褒め言葉である。

 アリスもツボに入ったのか笑っている。

「あははは、歩さんがお母さんか。本当に面白いよねコウキは」

「俺そんな変なこと言った?」

「いや、いいんじゃないかな」

 コウキが帰った後も、アリスは思い出し笑いで肩をふるわせている。

「もー、アリスちゃんてば、そこまで笑うことないじゃない」

「だって、たしかに初田先生と歩さんが話しているときって、親子みたいだから」

「初斗は世話が焼けるんだもの」

「ほら、そういうところ」

 ひとしきり笑って、アリスは休憩室から小さな包みを持ってきた。