初田ハートクリニックの法度

「そっかー。初田先生も変な人だもんね。初田先生ならやりかねない」

「うん、初斗が患者からどう思われているかよくわかるわ」

 コウキの率直な感想に、歩は笑うしかなかった。

 頼まれたわけではないけれど、アリスはティーセットの箱を丁寧にラッピングして、カウンターに乗せる。

 代金を受け取って、手提げ紙袋をコウキに渡した。

「コウキ、母の日の贈り物をするくらいにはお母さんのこと好きなんだね」

「うん。俺の親は母さんしかいないし」

「そう。大事にしなね」

「アリスは母の日に贈り物するの?」

「……しないよ。お母さんと呼べる人がいないから」

 純粋な少年の言葉に、アリスは少し寂しそうだ。

 両親に疎まれ、家から追い出された。

 店に来たばかりの頃、アリス本人が話してくれた。

 今でも親のことを好きになれないとも言った。

「育ててくれた親にそんなこというのは失礼だ」なんて言うことはできない。

 親に対する禍根やわだかまりは、アリスにしかわからない。