初田ハートクリニックの法度

「初田、おい、初田、お前の番だぞ。自己紹介をしろ」

 先生に五回呼ばれてもぼんやりしている。

 歩は「あんたのことじゃないの?」と初田をつつき、初田はやっと立ち上がった。

「すみません。新しい名字になったばかりなので、自分のことだと気づきませんでした。悪気はないので許してください。ええと、嘉神……でなく、初田初斗です。自己紹介ってなにを言えばいいんだい?」

 眠たげな様子で歩に聞いてくる。

「……出身中学と好き嫌いでも話しとけばいいんじゃない」

「出身は東京のS中学、嫌いなものは鏡と兄です。これでいいですか先生?」

「え、あ、ああ、そうだな。もう座っていいぞ」

 担任が苦笑いしながら、次の生徒を指す。

 初田は腰を下ろして歩にお礼を言った。