初田ハートクリニックの法度

 蛇場見(じゃばみ)(あゆむ)は自分の名前が嫌いだった。

 初見じゃ読めないと言われるし、字面も悪いし、響きも嫌い。

 高校に入学して最初のホームルームでも、自己紹介するのがすごく嫌だった。

「第三中から来ました、蛇場見歩です」

 短く挨拶だけして座る。

 悪意ではないのだろうけれど、

「じゃばみってどう書くんだ?」

「ウケる。変な名字〜」

 と他校から入学した生徒たちがささやき合うのが聞こえてくる。

 歩だって好きで蛇場見家に生まれたわけではないのに、なぜからかわれなければならないのか。

 最悪な気分で他の人の挨拶を聞き流していると、歩の隣にいた男子生徒がいくら先生に呼ばれても答えなかった。