初田ハートクリニックの法度

 診察が終わって帰り際、アリスはふと振り返って初田に聞いてきた。

「初田先生、お姉ちゃんが病院に運び込まれたときに新しい自分を作るようにいったけれどさ、なんかすごく実感こもってる感じだった。先生も、なにか新しく始めたことがあるの?」

「そうですね。……全部壊れても残ったものが、今ここにあるものです」

 平也が殺人事件を起こしたせいで、初田は無名な新米医師から、殺人鬼の弟になってしまった。

 元々住んでいた家に投石や張り紙をされ、近所の誰も口をきいてくれなくなった。

 母も引っ越しを余儀なくされた。

 名字が嘉神から初田になっていても、初田の顔は平也そのもの。

 双子である事実からは逃げられない。

 当時全て理解した上で雇い続けてくれた総合病院の院長には、今も頭が上がらない。