初田ハートクリニックの法度

 初田はアリスの怪我の治り具合、食事の様子など聞いて書き込み、カルテを閉じる。

「喉も問題なさそうですし、適正体重になって生理が通常通りにくるようになったら、もう来院の必要はないです」

「そっか。先生にはたくさんお世話になったな……。最初はいろいろつっかかってごめんね」

「いえいえ。慣れっこですからお気になさらず」

 いきなり一人暮らしが始まってしまったときはどうなることかと思ったが、アリスは楽しそうにしている。

 歩がいれば自分を傷つけるような真似はしないし、アリスはもう大丈夫だ。

「そうだ。お姉ちゃんからショートメッセージが来たんだ。五月末には退院できるんだって。落ち着いたら先生に血液提供のお礼、しにくるつもりらしいけど」

「リナさんと、メッセージのやりとりをするようになったんですか」

「うん。顔を合わせるのは嫌だけど、短い文章でなら、感情的にならず落ち着いて打てるね」

 ずっとアリスが利用されるだけだった姉妹関係は、リナの事故以降は少しずつ形をかえている。

 いがみ合うような憎しみに満ちたものではなく、皐月とリナのような依存する形でもない。

 有沢姉妹にとっては、これが一番適度な距離なのかもしれない。