初田ハートクリニックの法度

「初田先生。コウキくんを助けてあげてくださいね」

「もちろんだとも。完全に心が死んでしまう前に助けなければ」

 サイコパス、病名で言うと反社会性パーソナリティ障害。

 秀樹も、コウキと方向性が違うだけでサイコパスの気質がある。


 表面上は口達者

 利己的・自己中心的

 自慢話をする

 自分の非を認めない

 結果至上主義

 共感ができない

 他人を操ろうとする

 先日の三十分ちょっとの通話だけで、サイコパスの人間に多い特徴十のうち七つを備えているのを確認できた。

 毒親に育てられた子どもは毒に侵される。コウキはその典型的な症例だ。

 四十すぎた秀樹が人格の軌道修正をするのはかなりの労力を必要とするだろう。

 秀樹本人に病的な精神状態だという自覚がない上、精神疾患に対する偏見が強い。

 そういう人間に診療を受けさせることはほぼ不可能。

 だが、コウキは今ならなんとかなる。

 助けるためにも、コウキと秀樹はともにいてはいけない。

 児童相談所による保護、コウキがひとり暮らしをする等、支配下から逃す方法がいくつかあるが、それは初田が介入できることではない。

 この先どうしたいか、コウキ本人の意思も大事だ。

 とにかく、今は可能な限り訪問診療をするしかない。