初田ハートクリニックの法度

「……それじゃ、あたしはもう行くよ。あたしにお見舞いされるのなんて、お姉ちゃんの望むところじゃないだろうし」

「なによそれ! 私がいないとなにもできない役立たずなのに、上から目線で物を言わないで!」

 リナ以下だったアリスなんかに気遣われないといけない現状が無性に腹立たしい。

「アリスさんはひとりで歩けますよ。あなたも、この機会に家を出て、自分ひとりで歩いてみてください。(あゆむ)が、「いまのあんたは美貌をなくしたら価値が無くなる」なんて揶揄したそうですけれど、あなた自身がそれ以外を磨こうとしなかっただけで、本当はいくつでも誇れる物を持っているかもしれないでしょう」

 軽く会釈をして、アリスと初田は帰ってしまった。

(薄情者、最低、最悪。なんで帰るのよ。大嫌いよアリスなんて。利用価値の無いアリスなんて、もういらない。どこでだって勝手に生きればいいのよ)

 看護師や医師がかわるがわる入ってきて、二時間ほどで両親もかけつけた。

 美しくなくなったら両親に見放される、リナはずっとそう考えてきたけれど、両親は傷を負ったリナをいたわり、泣いてくれた。

 それだけで、リナは救われた気がした。