初田ハートクリニックの法度

 次に目を覚ますと、ベッドの上だった。

「お姉ちゃん!」

 仕事の途中で抜けてきたのか、アオザイを着たアリスがベッドに飛びついてきた。

 あの店主が看板娘だと言ったとおり。

 アリスにはあの店の服が映えている。

「なんで、あんたが」

「病院から電話があったから。お姉ちゃんのスマホ粉々で使い物にならなくなっててさ、手帳にうちの店の番号、メモしてたんでしょ。お父さんとお母さんにはさっきあたしが連絡しといた。もうすぐ来るよ」

“妹を気遣う優しい姉”を演じるために書いておいたに過ぎない電話番号だ。

 実家の電話番号なんてわかりきっているから書かなかった。

 だから真っ先にアリスが駆けつける結果になった。

「……明日、仕事。ファッションショーに穴を開けるわけにはいかないわ」

「物理的に無理だと思う。左足の複雑骨折、それから左腕も裂傷がひどかったって。先生が最低でも一ヶ月は入院しないといけないって言っていた」