初田ハートクリニックの法度

 リナが目覚めたのは、ストレッチャーというものの上だった。

 足に力が入らない。顔が痛くて、まぶたを開けるのすらおっくうなほど。

(ここは、病院?)

 まわりにいる救急隊の男性に声をかけられたけれど、うまく聞き取れない。

 三回目でようやく音として理解できた。

「ーーご自分の名前と年齢言えますか」

「リナ、有沢、リナ。二十四歳」

「有沢さん。血液型は。出血がひどいので輸血が必要かもしれません」

「AB……」

 答えながら、リナは思った。

 父がA型、母がB型。

 アリスはA型。

 輸血が必要になっても血を分けてもらえない。

 献血する人がたまたま少なくて血液が足りなくなったら、自分はどうなるんだろう。

 明日は撮影があるのに、入院なんてことになったら仕事に穴を開けてしまう。

 これまで一度だって仕事を休んだことが無いのに。リナがいなかったら、誰かがその仕事をとってしまう。

 手術、縫合、そういう話をしているのが聞こえてまた意識がとおくなった。