初田ハートクリニックの法度

 ワンダーウォーカーを出たリナは早足で歩いた。

(なんなのよあのオカマ。私と同程度の人間はいくらでもいる、美貌を失うと価値が無いですって? 目が腐ってんじゃないのあいつ。私は美人で、たくさんの人に愛されているんだから。エステにもたくさん行って、このさき何年だって美しさをキープして、雑誌のトップを飾れるんだから!)

 スマホを取り出して、今朝SNSに投稿した、最新ネイルの写真への反応を確認する。

 ハートの数は三百。

(前回は投稿して一時間で五百もらえたのに。なによ。ダメダメじゃないあの店。人気サロンだっていうから予約して行ったのに。私のときだけ手抜きしたんじゃないの)

 スマホを握る手に力がこもり、本体がミシリと軋む。

 フォロワーが一万人いるはずなのに、リナのネイルがいいと思った人間はそのうちたった三百人だけ。

 美貌をなくせばなんの価値も無い、店主の言葉がまた頭の中にこだます。

(みんなもっと私を見なさいよ、私は愛されているの、綺麗なの。アリスより、あんな愚図な妹より価値があるの。お父さんとお母さんもいつも言っているもの)