初田ハートクリニックの法度

「まずアタシと性格が合わないと働けないから妥当よ。それで、アリスちゃんは週何日来れる?」

「何日でも。ここから徒歩圏内だから、いつでも来れます」

「そう。それならまずは商品を一着あげるから、制服代わりに着てみなさい。こういう店は自分が宣伝塔になるのが一番手っ取り早いから」

「あたしが着るの? 売るだけでなくて?」

 歩は服のコーナーに飾っていた藍色のアオザイと手袋をアリスに押しつけ、試着室の中に放り込む。

 アリスの着替えが住むまでの間、歩はコウキにも声をかける。

「あんたもバイト希望?」

「いや、俺は初田先生についてきただけ。この店おもしろいね。この箱に書かれている文字英語じゃないし、面白い匂いがする」

「それはインドで買いつけてきたものよ。これは白檀(びゃくだん)こっちの箱はセージ。サンプルを出してあるから一個ずつ匂いを比べてみなさい」

「わ、おいしい匂いがする」

 二人がわいわいと話している間、初田は静かに腕組みして待っていた。コウキが人と話せるようになってきていることが感慨深い。

 家に閉じ込められていた頃の陰鬱とした姿が嘘のようだ。