初田ハートクリニックの法度

 つれないアリスの返答にコウキは言う。

「いつでも会えるでしょ。俺の住んでるとこ、ここから目と鼻の先なんだから。アリスは面白いから、俺、また話を聞きたいな」

「だいたいの人は、あたしの姉さんのこと知ったら、あたしに興味がなくなるわよ」

 いつだって、まわりのひとはリナを褒めてアリスを貶す。

 コウキももしかしたら、不安にかられるアリスの元に、その不安の元凶がやってきた。

 聞き慣れたローヒールのパンプスの靴音が、近づいてくる。

 体のラインがわかる黒のレースワンピースを着たリナが、アリスの前に立った。

 高名なブランドで身を固めたリナと、ボロアパートはあまりにも不釣り合いだ。

「あら、アリスにお友達なんていたの?」

「……なにしにきたの」

「ひどいわ。お姉ちゃん、アリスのために買い物をしてきたのに。お父さんはなにも買わなかったって言っていたから、姉としてせめてこれくらいは手助けさせて」

 右手にさげていた布の買い物袋をアリスの手に持たせて、リナはコウキに微笑みかける。

 雑誌に載るときのような完璧な笑顔だ。

「あなた、名前は? 私はリナ。アリスの姉なの。よろしくね。この子、人見知りでいつも私のあとについてまわってて。私がいつも面倒を見てあげているの」

 コウキは見惚れるかと思いきや、顔をこわばらせて後ずさりしている。

 例えるなら、強盗か殺人鬼にでも遭遇したような反応。