初田ハートクリニックの法度

 少年は見たところ十代半ば。

 ストレートの黒髪に赤いパーカー、デニムにスニーカー。

 脇にかかえたノートに、マジックで“日記”と書いてある。

 時期的に考えて、高校が春休み中なのかと推測した。

 少年はもう一度アリスに問いかけてくる。

「どれが春?」

「あのさ、あんたがなに言ってるかよく分からないから、一から説明してくれない?」

「きのう診察の時に、初田先生が『今度は春を探してみなさい』って言ってたから」

 初田は珍しい部類に入る名字だ。

 そして診察。

「もしかして、あんたも初田ハートクリニックの患者?」

「あんたもってことは、お姉さんも初田先生を知ってるんだ? きぐうだね。俺はコウキ」

「……アリス」

 コウキが名乗ったので、アリスもつられて名乗った。すると、コウキの顔がほころぶ。