初田ハートクリニックの法度

「診断書にも書きましたが、今のコウキくんの精神はとても危ういバランス、トランプタワーのような状態にある。指先の力加減ひとつ間違えたら崩壊する。休息が必要です。高校入試を受けるのを一年遅らせたほうがいいと思うくらいには危険だ」

『そんなの診療費をとるための嘘だ。総合成績は学年三位なんだぞ』

 目の前にいるコウキでなく、成績表でしか見ていない。

「あなたは崖っぷちに立っているコウキくんの背中を突き飛ばそうとしている。いま選択を誤れば、コウキくんが後戻りできなくなりますよ」

『なんだ? 脅しか? そっちがそのつもりなら警察に言ってもいいんだぞ』

 電話の向こうからは壁か何かをドン! と力任せに叩く音が聞こえてくる。

 礼美の悲鳴にも似た声がかすかに聞き取れた。