初田ハートクリニックの法度

「ネルさん、お腹にカイロを貼らなくて大丈夫ですか。冷えは大敵ですよ」

「きらしちゃったの」

「ではこれをどうぞ。今朝母さんが持ってきたんです」

 寝室にも暖房があるとはいえ、腹部や手足は冷えるもの。

 初音が編み物教室で学んだと言って、アームウォーマーとレッグウォーマーをくれた。

 ピンクと薄紫のボーダー柄。

 初田が小学生の頃、「娘も欲しかったけれど、子宮の病気になって諦めるしかなかった」と言っていた。

 だからか、こうしてちょくちょくネルに手作りのものや服をくれる。

 ウール百パーセントのもこもこをつけたネルは満面の笑みだ。

「かわいい。あったかい。あとで初音さんにお礼言わなきゃ」

「そうしてください。明日、仕事中に気分が悪くなるようなら、いつでも休んでくれてかまわないですからね」

「だいじょうぶ。白兎先生が痛み止めを処方してくれたから」

 白兎は長い間主治医を務めてくれているだけあり、ネルの生理のタイミングを見越して薬を出してくれる。

 コーヒーを勧めてきさえしなければいい医師でいい先輩だ。