初田ハートクリニックの法度

 夕方。
 皐月がパートから帰り、アリスは今日もらった冊子を渡した。

 皐月が冊子を読む間に、次回来院の付き添いをお願いする。

「初田先生が、中学時代の症状や通院のことも聞きたいから来てほしいって」

「あらそうなの? リナちゃんが、『私が全部引き受けるからなにも心配要らない』って言っていたのに」

「それは初田先生に言って。あたしは言われたことを伝えているだけ」

 皐月はリナに全幅の信頼をおいているから、リナが「私に任せて」と言えば本当に全部任せてしまう。

「確かにお休みだから付き添えるわ。初田先生ってどんな先生なの?」

「変な人。ウサギのマスクをかぶっているよ」

 アリスにだけマスクを外して見せたのは、アリスを少なからず信用しているからだと、アリスは思う。

 初田もまた、誰かの犠牲になり肩身の狭い思いをしている仲間だった。

「変だけど、悪い人ではなかった」

「そう。アリスがお医者様をそこまで褒めるなんて、初めてかもしれないわね」

 皐月に言われて、アリス自身、自分が初田を信用し始めていることに驚いた。