初田ハートクリニックの法度

 初田は卓上カレンダーをアリスに見せながら聞いてくる。

「ご両親の休みの日はどこかな。水曜と日曜が休診だから、それ以外の平日か土曜のどこか」

「ええと、たしか母さんが月曜休みだったと思う」

「それじゃあ二週間後の月曜、今日と同じ時間でいいかな」

 アリスがうなずくと、初田は診療予定表にさらさらとアリスの名前を書き込んだ。

 ちらりと目に入っただけでも、びっしりと予約で埋まっている。

 変な人だけど、これだけの患者が訪れるくらいには信頼されている。

「それではアリスさん。またお待ちしています」

 穏やかな声で見送られ、診察室を後にした。

 受付で会計を済ませるとき、ネルが明細書とは別に、手のひらに収まる瓶をくれた。

「桜ハチミツです。よかったらホットミルクを作るときに使ってくださいね」

「なんか見るからに高そうなんだけど、これいくらするの」

「私が勝手にプレゼントするだけなので、お代は要りませんよ。ホットミルク仲間を増やしたいだけです」

「ホットミルク仲間ってなにそれ」

 意味が分からないけど、ネルが真剣に言うのでアリスは笑ってしまった。

 笑うなんていつぶりのことだろう。

 本当にお金は要らないと言うので、素直に受け取ることにした。