初田ハートクリニックの法度

「んー。なにも考えてなかったです。にいさんがいつもそうしてくれるから、私もそうしているだけで」

「あなた、お兄さんがいるの?」

「ええ。直接の兄ではないですが、血縁です。診察室で会ったでしょう」

 診察室にいた男なんて、初田しかいない。アリスは驚くより、納得してしまった。

 初田とネル、顔はどこも似ていないけれど、まとう雰囲気というか、空気がよく似ている。

 ぬるま湯や陽だまりのようとでもいうのか。

 苛立って怒鳴っても、毒気を抜かれてしまう。

「ホットミルク、もっと飲みません?」

「もういいわ、ありがと」

 診察室の扉が開き、ウサギ頭が顔を出す。

「アリスさん。もう一度診察室に来てもらえるかな。次の来院について話をしたいから」

「わかった」

 診察室に入ると、予想に反してリナがどこか不機嫌そうな顔をしていた。

 初田がのんびりと食事指導に関する話を始める。

 次の来院時は両親どちらかに同伴してもらいたい。それがむりなら一人で来るようにと。

 なんというか、リナに来てほしくなさそうな意図を感じた。

 一通り説明を終えて、初田は棚から小冊子を取ってアリスに渡す。『胃にやさしい食事』と書かれた本だ。