初田ハートクリニックの法度

 アリスに優しくする男はリナ目当て。

 話しかけてきてくれるクラスメートもいたけれど、二言目には、「リナさんってどんな男が好み?」と聞いてくる。

 それ以来アリスは、男性を信用できなくなっていた。

 初田もリナの魅力にとりつかれて、アリスを利用するんじゃないか。

 そんな不安があった。

「……スさん、アリスさん、大丈夫ですか?」

 目の前に、受付の女性ネルがいた。

 気づいているのかいないのか、左右違う靴下をはいている。

 膝掛けを二枚手にしていて、アリスの顔をのぞき込んできた。

「一応暖房はいれているんですけど、寒かったですか? ひざかけ、使ってくださいね。ホットミルクもありますよ」

「え……」

 ネルはアリスの答えを聞く前に、アリスの肩と膝に厚手の膝掛けを広げた。

「今日は特別に桜ハチミツですよ~。桜の香りがするでしょう」

「で、でも、あたし……太るのは」

「ホットミルク一杯じゃ太りませんよ。私はこの九年、毎晩飲んでいるけれど太らなかったです。ほら私、特別痩せているわけじゃないけど、太ってはいないでしょう? 問診票にはアレルギーなしと書いておられたので、飲めると思うんです」

 無邪気な笑顔で差し出されるカップ。

 同じ女性と言うこともあってか、ネルはアリスの太りたくないという言葉を尊重し、さりげなくフォローする。