「なにも売っていませんよ。ようは、“自分はやればできる子、すごい”と自分に言い聞かせるんです。自分は駄目だと思い込むと、本当になにをやってもうまくいかなくなるものです。わたしだって誰もほめてくれないなら、自分に言いますよ。『朝ご飯を残さず食べていて偉い』って」
「気合いでなんとかなるなら病院って存在しないんじゃない」
「ははは。アリスさんはへりくつが好きなんですね。童話のアリスとおんなじだ」
アリスの口からは次々と否定する言葉が飛び出す。
「かわいげが無いって言いたいんでしょ。お姉ちゃんは優しくて素直で良い子なのにねって耳タコよ」
「外見は痩せて綺麗になりたいのに、内面は綺麗になりたいって思わないんですね」
「あたしの心は綺麗じゃないって?」
「さっき自分で言ったんじゃないですか。心が不細工だって」
辛辣な初田の返しに、アリスもムキになる。
アリスが言い返すのを、初田は割と楽しんでいた。
ずっと無言で反応がないより、言いたいことを言ってもらえた方が内面を見ることができるし、治療が捗るのだ。
とはいえ、初田にここまで食ってかかる人間はかなり珍しい。
大体の人間は、「変なやつだ」と呆れて会話をやめてしまう。
これまで腹の内をぶつける先がなかった分を、今こうして初田にぶちまけている。
「ほんっとサイテー。ふつう、患者に向かって心が綺麗じゃないってハッキリ言う? 変人って噂は本当だったのね」
「お褒めにあずかり光栄です。わたし、素直なところが取り柄なんです」
「褒めてないわよ」
こうして対話をすると、アリスは本来ハキハキとものを言える性格だとわかる。
リナの前だとかなり縮こまっているが。
家ではどのような生活を送っているのか気になった。



