初田ハートクリニックの法度

「リストカットや自分の腕にたばこの火を押し当てる行為はね、ストレスを吐き出す先が他にないからやってしまうものだと言われている。結婚して伴侶に大切にされることで、自傷が減ったという例もある。アリスさん、悩みを相談できる友だちはいるかい? 一緒にカラオケに行くような人でもいい。自分を傷つける以外の方法で、胸の内に抱えたものを解消できるなら、それが望ましい」

「こんな女に友だちがいるように見える? あたしならこんな愛想なしで心も不細工なやつと友だちにならないわ」

 アリスは自分を手のひらで示して嘲笑う。

 その顔は、心底自分が嫌いだと言っている。

 コンプレックスを抱えて生きる時間が長かったから、かなり思考がネガティブだ。

「まずは自嘲する癖を直そうか。アリスさん。言霊(ことだま)って知っているかい」

「なに、それ? もしかしてここってスピリチュアル系で変なものを売りつける場所だったりする?」

 かなり偏見があるようなので、初田は苦笑する。