初田ハートクリニックの法度

 アリスは自分の手を伸ばそうとして、ためらった。

「ほんとうに、あたしはちゃんと生きられるの?」

「あなたが望むのならば」

 アリスの顔色は青白く、腕も骨の形が分かるほどに細い。

 手の皮膚はひびとあかぎれでガサガサ。

 爪は紫がかっていて、ところどころ割れていた。

「生理がこなくなった以外に、自覚している症状はあるかな」

「さあ?」

「階段を上ったり、ちょっと走っただけで息苦しくならない?」

「ふん。……見てきたみたいに言うのね。腹立つわ」

 素っ気ない態度だが、一応初田の質問に返事はしてくれるので治療に応じる気は少なからずあるようだ。

 カルテにアリスの状態をつぶさに書き込む。

 初田に勢いで言い返したことも考えると、栄養失調ゆえに苛立ちやすい状態になっていることがわかる。