初田ハートクリニックの法度

 コウキの予約時間を十五分過ぎてから、初田ハートクリニックの電話が鳴った。

 受付にいたネルが子機を取り、応対する。

「初田ハートクリニックです」

 それは、例えるなら猛毒の弾丸を装填したガトリング砲。
 中村秀樹からかかってきた電話はそんな内容だった。

 すぐさま初田が電話をかわる。

 診察室の親機でスピーカーボタンを押し、三十分。

 この男はどこで息継ぎをしているのかと思うほどの罵詈雑言が延々と垂れ流された。

 三十分の内容を一四〇字以内に収めるなら、

 うちの子は精神病じゃない
 ただでさえ高校退学処分になって会社で恥をかかされたのに精神科通院なんてされたらオレの株が下がる
 長期治療なんてもっともらしいことを言って治療費をふんだくる詐欺師

 毒舌ガトリング砲をBGMに、初田はウサギ柄トランプでトランプタワー作りを楽しんでいた。

 紅茶を運んできたネルは、よくこんな騒音を聞きながらトランプタワーを作れるなと感心した。

 三十分の間、初田は「ええ」「ああ」とやる気のない相槌を返して次のトランプを手に取る。

 本当に、一方的に罵られているだけで、会話になっていない。