初田ハートクリニックの法度

 初田は卓上カレンダーを手にとってコウキたちに見えるように持つ。

「来週金曜の同じ時間にまたおいでなさい。お母さん、はじめは別の病院に紹介状を! と言っていたけれど、またここでいいですね?」

「……はい」

「長期的な治療になるから、お父さんともしっかり連携してください。コウキくんだけががんばってどうにかなることではないんです。言うだけでお父さんに伝わらなそうなら、診断書を書きますよ」

「…………はい、お願いします」

 夫の協力も必要不可欠、と言われた礼美の顔色は悪い。
 礼美は迷い無く診断書を希望した。

 だから礼美に対して、ひとつ助言をした。

 そのたったひとつの行動が、後に必ず礼美の助けになると言い添えて。

 中村母子がクリニックを出るところまで見送り、初田は来週どうなるかと案じる。

「先生。コウキくん、来週ちゃんと来てくれますかねー」

「来ないんじゃないかな、コウキくんが来たいと望んでも」

 初田の予想では、コウキは来ない。
 コウキと礼美が何の顔色を窺い、評価を気にしているのか。
 それはおそらく秀樹。

 中村家の絶対的な支配者、父親の秀樹が通院(それ)を許さないだろうと予測していた。

 そして予想通り、予約を入れた金曜の十一時に中村親子は現れなかった。

 かわりに、ひどく高圧的な物言いをする男から電話がかかってきた。