初田ハートクリニックの法度

 花森は深呼吸してから、両手を合わせてネルに言いつのる。

「他の子たちにはチャットで伝えてあるんだけど、東堂が来たらさ、ちょっと協力してほしいんだ」

「協力?」

「ええと、あたしと東堂が……二人きりになれるように」

 顔を赤らめた花森の言葉尻が弱々しくなっていく。

 高校時代バスケ部のキャプテンをつとめていたときの勇ましさはなりを潜めている。

 告白するつもりなんだな、とネルにもわかった。

「ん。協力する。がんばって」

「ありがとう」

 話している間に、人混みの間から東堂と他のメンバーが来た。

 東堂はスーツを着ていて、学生時代よりいくらか大人びている。

 消防士としての訓練を積んだからか体格もがっしりしていて、背が高くなった。

「よう。久しぶりだな根津美、花森」

「ひさしぶり」

 ネルは東堂と元クラスメートたちに会釈する。

 東堂はネルのドレス姿を見て、事情を察してくれたようだ。

「根津美は晴れ着じゃないんだな。早朝から何時間も準備しないとだって聞くもんな」

「ドレスでも、出席できるだけいいの。にいさんも似合ってるって言ってくれたし」

 衣装屋からここまで初田が車で送ってくれた。

 ドレスもすごく似合うと、手放しで褒めてもらえてそれだけで今日はもう成人式が終わったような気持ちでいた。

「そうだな、ドレスにかんざしって意外と合うんだな。みるからに良いものだけどお母さんから借りたとかか?」

「かんざし、にいさんが成人祝いにってくれたの」

 そばで話を聞いていた女子たちが固まった。