初田ハートクリニックの法度

 成人式当日。

 ネルは黒のロングドレスを着て、アップした髪にはネズミのかんざしをさす。

 駅前で高校の同級生である花森たちと合流する約束だ。

 待ち合わせ時間の三十分前に目印である石像前で待っていた。

「ネル! 早かったんだね。待たせてごめん」

「ううん。そんなに待っていないよ花菜(かな)ちゃん。わあ、すごく似合うね」

 花森の振り袖はクリーム地の牡丹柄。

 高校の時ショートヘアだった髪は伸ばされ、うなじでまとめている。

 髪飾りも牡丹。

 花森の快活な雰囲気によく似合っていた。

 ネルの素直な賛辞をうけて、花森は照れて視線をそらす。

 それからネルのドレスを見て少しだけ表情を曇らせる。

「ありがと。ばあちゃんがどうしてもって言ってレンタルしてくれた。……ネルは振り袖じゃないんだね」

 同窓会に参加する人たちが、ネルと花森の横を通り過ぎていく。

 ほとんどの女性が華やかな振り袖で、ドレスの子は片手で数えるくらいしかいない。だからネルはとても目立っていた。