初田ハートクリニックの法度

 食事を終えて弁当箱を片付ける。

 弁当の巾着にメモ用紙が入っていて、開いてみると『にいさん、おしごとがんばって』と書かれていた。

 へたっぴなネズミと帽子の絵も描かれていて、初田の口元が緩む。

 そんな初田を眺めて、白兎は目を細める。

「鳩羽じゃないが、初田君はどんな人と結婚するんだろうな」

「さあ。一生独身じゃないですかね。平也のことがあるし、母にすら変わり者すぎると言われますし、わたしに付き合っていられる人なんていないと思いますが」

「一人だけいるじゃないか」

 白兎はネルの診察をするとき、一度聞いてみたのだ。

「親戚とはいえ、初田君は変人だから相手をするのは疲れるんじゃないか? 実験台にされるのは嫌にならないか」と。

 そうしたらネルは笑って答えた。

「私はのんびり屋すぎてついていけない、もっとまわりに合わせろと友だちによく言われるけれど、にいさんは同じくらいゆっくりだし、一緒にいて楽しいです。昨日のホットココアもおいしかった」

 とうの本人たちは毎晩のお茶会を心底楽しんでいるようだ。

 アリスの物語と同じように、末永くお茶会を繰り広げてくれそうだと白兎は思っていた。