初田ハートクリニックの法度

「そうじゃない、そういうことじゃない。普通なら若い女の子と同居したらときめきの一つくらいするもんだろ! ああもう! 白兎先生もなんか言ってやってくれよ。初田先生とは大学時代から仲が良いんだろう」

 鳩羽の矛先が近くに座っていた白兎に飛んだ。

 ブラックコーヒーとサンドイッチを堪能していた白兎は、腕時計で時間を確認して剣呑な目を鳩羽に向ける。

「ウサギでうさばらしするのはやめておくれよ、うざったい。初田君は学生時代からそういうやつだから絡むだけ無駄だぞ」

「へえ。学生時代からこうなのか」

「そうとも。同じ学科や看護学科の女子たちがよく初田君にアタックしていたが全員玉砕していたぞ」

 白兎に学生時代のことを言われても、初田はピンときていなかった。

「アタックされたことなんてないですよ」

「おいしいコーヒーを淹れる店を見つけたので一緒に行きたいです、と言っていた女子がいなかったか」

「うーん。そういえば何人かいたような。でもわたし、コーヒーが嫌いですからお断りしました」

「付き合ってくださいと言っていた子は」

「忙しいので一人でどこへなりと行ってくださいとお返事しました」

 鳩羽が『駄目だコイツ』という顔になった。白兎は初田を親指で指しながら鳩羽に言う。